文字・図形・記号を組み合わせた商標は、文字だけの商標、図形だけの商標、記号だけの商標に比べて識別力を発揮しやすく登録し易いというメリットがあります。
識別力がない文字だけの商標を登録することはできませんが、識別力がある図形と組み合わせれば、商標全体として識別力があると判断されるからです。
商標を登録することだけを考えれば、文字・図形・記号を組み合わせた商標にメリットはあるります。
しかし、商標が登録されたあとは第三者が使用する商標に対して類似を主張しにくいというデメリットがあります。
文字と図形を組み合わせた商標が登録された場合、第三者が使用する商標が登録商標を構成する文字だけ、または図形だけの場合に類似・非類似の問題が起こります。
第三者が使用する文字、または図形と、登録商標を比べた場合、両者は非類似であると判断される場合がほとんどです。
この問題は、商標の登録方法を変えることで対処することができます。
商標を登録するときの原則は、実際に使用する商標と同一の商標を登録することです。
実際に使用する商標を登録して使用し続けることが商標の価値を高める方法だからです。
しかし、文字と図形を組み合わせた商標の場合は、文字だけの商標と図形だけの商標に分けて登録するようにします。
文字と図形を組み合わせた商標の使用は、つまり、文字だけの商標と図形だけの商標を組み合わせて使用することに他ならないからです。
文字だけの商標と図形だけの商標を分けて登録すれば、第三者が使用する商標が文字だけ、または図形だけの場合であっても類似を主張することができます。
この登録方法の欠点は、文字と図形を組み合わせた商標を登録する場合に比べて倍の費用がかかることです。
文字と図形を組み合わせた商標は審査で拒絶されるリスクが増える
文字と図形、図形と記号、記号と文字のような組合わせ商標は、商標を構成する構成要素の一つに識別力がなくても他の構成要素に識別力があれば、商標全体として識別力があると判断され登録され易くなるというメリットがあります。
確かに識別力の有無から判断すると、文字・記号・図形だけの商標に比べれば識別力を発揮しやすく登録され易くなります。
ただし識別力の有無は、商標審査の一つの基準に過ぎません。
商標審査のもう一つの大切な基準は商標類似です。
組合わせ商標の類似判断においても、商標を構成する構成要素の一つが引用商標に類似していても、商標全体として出所混同を生じるおそれがないほどに全体商標の外観・称呼・観念が相違すれば、商標全体として引用商標と類似しないと判断され結果的には登録されます。
「結果的には登録される」としたのには理由があります。
商標審査では、組合せ商標を構成する構成要素の一つが引用商標と類似していれば、商標全体として類似すると形式的に判断します。
商標全体として非類似と判断されるのは、形式的に拒絶された後に出願人が反論した場合です。
この運用は、日本をはじめ海外でも同じです。
例えば中国の場合の運用は以下の通りです(商標審査基準「組合せ商標の審査」より抜粋)
組合せ商標における構成要素が同一または類似し、関連公衆に商品又は役務の出所を誤認させる恐れがあるものは、類似商標と判定する。
ただし、組合せ商標全体の外観、称呼又は観念が明らかに違い、関連公衆に商品又は役務の出所を誤認させる恐れがないものは除く。
中国の場合は、日本のように審査の段階で反論する機会が与えられず、拒絶理由に対して不服がある場合は審判を請求して反論しなければなりません。
反論すれば登録される可能性はあっても、費用の高騰を嫌い審判を請求しない場合もあるでしょう。
組合せ商標は単一の商標に比べて拒絶されるリスクが高いことを知っておく必要があります。
そしてそのリスクは組み合わせの数に比例します。