商標が使いづらい理由の一つは、商標法で区分されている商品やサービスごとに商標を登録しなければならないからです.
もしも世の中に存在する全ての商品やサービスで商標を独占したい.
その目的を実現するためには、45ある全ての区分で商標を登録しなければなりません(「TOKYO 2020」は全ての区分で商標登録されています).
さらに商標権は国ごとに発生します.
世界中で商標を独占したいなら全ての国で商標を登録しなければなりません.
世の中に存在する全ての商品やサービスで商標を独占するためには、全ての国、全ての区分で商標を登録するという非現実的な手続きが必要になります.
ほとんどの企業は、自社の製品やサービスに関係する区分においてのみ商標を登録しています.
自分の商品やサービスに関係がないとはいえ、商標を登録していない他の区分で他社が同一・類似の商標を登録しているという現実は知っておかなくてはなりません.
現在は必要がない区分かもしれません.
しかし将来の事業展開によっては、その区分が必要になることがあります.
そのときになって商標を登録したくても、商標を登録できないばかりか、その区分に関係する商品やサービスで商標を使用すれば他社の商標権を侵害するということもあります.
区分の制限を受けずに商標を使いたい場合に参考になるのが著作権の活用です.
商標と著作物、法律は違っていても商品やサービスを区別するために使うという場合においては、どちらもその目的を達成することができます.
商品に付いているロゴが商標法で保護される商標の場合もあれば、商品に付いているロゴが著作権法で保護される著作物の場合もあります.
同じロゴでも商標ならば区分の制限を受けますが、著作物ならば区分の制限を受けません.
区分の制限を受けたくないのであれば、著作物であるロゴを商品やサービスに使えば良いのです.
ロゴに著作権を発生させるためには工夫が必要です.
ロゴが創作的に表現されていれば著作権は発生するので、ロゴに著作権を発生させることはそれほど難しいことではありません.
デザイナーにロゴを創作してもらい、デザイナーが創作したロゴの著作権を譲り受け、著作者人格権不行使の契約を交わす、これだけです.
著作権が商標権に劣るところもあります.
商標権が更新により半永久的に存続するのに対して、著作権は創作者の死後70年で消滅します.
この著作権、存続期間は延長に延長を重ねているという珍しい法律なので心配は要りません.