商標権と著作権の決定的な違いは「知らなかった」ことの扱いです.
あるロゴマークを使っていたとします.
そのロゴマークが偶然にも他人の登録商標に似ていることがあります.
他人の登録商標と似ているロゴマークを同一または類似の指定商品・サービスに使用したら他人の商標権の侵害です.
他人の登録商標の存在を「知らなかった」としても商標権の侵害は免れません.
「知らなかった」が免罪符になる著作権
あるロゴマークが偶然にも他人の著作物に似ていることがあります.
他人の著作物と類似するロゴマークの使用は形式的には複製権を侵害します.
その他人の著作物を「知らなかった」としたらどうなるのか.
商標権のときとは違って著作権の侵害になりません.
他人の登録商標に似ているロゴマークを使用した場合と、他人の著作物に似ているロゴマークを使用した場合とでは、「知らなかった」の扱いが全く違います.
知らなかったでは済まない商標権侵害に対して知らなかったなら侵害にならないのが著作権です.
「知らない」こと自体が罪
商標権や特許権などの登録によって発生する権利は、公示によって権利の内容や存在を広く一般公衆に開示しています.
権利の存在が公示されている以上、知らなかったでは済まされず、逆に知らなかったことに問題があると見做されます.
著作権の場合は商標権のように登録公示制度を採用していません.
公示されていない以上、他人の著作権の存在を知らないのが当たり前です.
これが知らなかったら著作権侵害にならない理由です.
著作権の侵害になるのは他人の著作物の存在を知っているときです.
同じ権利侵害でも商標権と著作権とでは全く考え方が違います。
著作権を調査してはいけない
「知らない」ことが免罪符になるなら、他人の著作物の存在は知らない方が安心・安全です.
特許権や商標権の考え方で他人の著作権を調査してしまう.
著作権調査をして他人の著作物を見つけてしまったら、「知らなかった」という免罪符は使えなくなります.
商標権の調査は必須
新たに商品・サービスを市場に出すとき、商品・サービス名の商標調査、デザインの意匠調査、技術の特許調査は必須です.
著作権では免罪符になる「知らなかった」は、商標権・意匠権・特許権では通用しません.
「知らなかった」ことが後々とんでもないことになってしまう怖い権利なのです.