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建築設計図に冷たい著作権と建築物に優しい意匠権

 

設計図を無断で使用して勝手に建物が建築されたとき、真っ先に思いつくのが著作権です.

確かに著作権法が保護する著作物に設計図が含まれています.

しかし現実には設計図が著作権で保護されることは稀です.

 

設計図に冷たい著作権

建築設計図には、設計対象を表す線図と設計対象の具体的な形状や寸法というの2つの要素が含まれています.

設計内容を正確に伝えるためには、線図だけでは足りず形状や寸法も必要です.

ところが著作権の世界では、建築設計図のうち形状や寸法を保護するかどうかについて判断が分かれている、というのが現状です.

 

著作権法が保護する対象は表現であってアイデアではありません.

建築設計図のうち、線図は表現、形状や寸法はアイデアと見做され、アイデアは著作権の保護対象ではないというのが著作権が設計図に冷たい理由です.

 

 

設計図のデッドコピーしか規制できない

形状や寸法を含めた建築設計図が著作権で保護される場合でも安心できません.

著作物である建築設計図が複製されると複製権の侵害となります.

しかし侵害が認められる複製の範囲は非常に狭く形状や寸法が全く同じ、すなわちデッドコピーの場合しか認められません.

 

柱の位置、柱の数、柱の間隔というものが無限に選択できるような設計ではなく、合理的な設計であるためには自ずと限定される性質のものです.

だれが設計しても同じような設計図、これは創作性がないと判断されます.

 

建築設計図と建築の著作物は別もの

建築設計図に基づいて建築物を建築しても建築設計図を複製したことにはなりません.

建築設計図に著作権があったとしても、建築設計図に基づいて建築した建築物は、建築設計図の著作権の侵害ではありません.

 

建築設計図の著作権と建築物の著作権は個別に判断されます.

設計図と同様に建築物も著作権法が保護する著作物に含まれています.

しかし建築物に著作権が認められるためのハードルは設計図以上に高いものです.

いわゆる建築芸術と言えるような創作性を要求しています.

したがって例えばハウスメーカが建築するような一般住宅に著作権は認められません.

 

建築物は意匠権で守る

建築物を守るために適した法律が意匠法です.

意匠法の法改正により建築物が保護対象に含まれました.

これまで組み立て家屋のような動産にしか認めていなかった保護対象を不動産にまで拡げ建築物全般を意匠権で保護する仕組みができあがりました.

 

著作権よりハードルが低い意匠審査

意匠登録は審査があるから難しいのではないか.

たしかに無方式で創作と同時に権利が発生する著作権に対して、意匠権は審査をクリアしないと権利が発生しません.

手続きの有無という違いはあっても著作権より意匠権の方が保護のハードルは低いのです.

 

著作権は創作すれば権利が発生するのではなく、正確には保護に値する「創作物」を創作すれば権利が発生します.

保護に値する創作物であるかどうかの判断は最終的には争いになってみないとわかりません.

裁判所の判断があるまでは、権利があるのかないのか分からないグレーな状態です.

 

意匠権の有無は特許庁が判断します.

行政審査なので判断の基準もわかりやすく定められています.

 

裁判所が判断する創作性.

特許庁が判断する創作非容易性.

言葉は似ていますが、創作非容易性の有無は審査基準にわかりやすく定められています.

「改定意匠審査基準の概要より抜粋」

 

実際にどのような意匠が登録されているのかを見て見ると意匠審査のハードルの低さを実感できるはずです.

 

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