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同じ貨物なのに知的財産権の侵害と非侵害!違いは何か

 

日本をはじめ各国の税関は知的財産権侵害品の輸入を禁止しています.

それにも関わらず知的財産権侵害品が輸入されている理由は、1つに知的財産権侵害品の全てを税関が把握することができないこと、もう1つは同じ貨物でも知的財産権の侵害にならない輸入があることが挙げられます.

 

非商業輸入

知的財産権の侵害と言っても、商標権や著作権のように外観で判断できるものから内部に特徴がある特許権のようなものまで多種多様です.

大量の貨物が通関されるなか、その全てを税関で把握することなど到底不可能です.

 

そしてもう一つ、特許法や商標法のような産業立法と言われる法律は、事業としての輸入や製造・販売を規制の対象としています(特許法68条).

著作権にしても頒布する目的をもたずに輸入される場合は著作権の侵害ではありません(著作権法113条1項1号).

 

このように事業としての輸入ではない個人的な輸入は規制の対象から外されています.

いわゆるB2Cのように海外の販売業者から日本の消費者に直接輸入する場合は、日本国内の輸入者は事業としての行為ではないため、輸入禁止の対象外です.

 

最近はこの制度を悪用した個人輸入の偽装や、海外の事業者が直接、日本の消費者に対して輸出する商業輸出が増えたことにより、B2Cだからといって全てが輸入禁止の対象外となる訳ではなくなりました.

 

また、個数が少ないと個人的使用、個数が多いと個人的使用と認められないということもありません.

貨物1つの輸入でも日本国内で譲渡する目的をもって輸入するのであれば個人的使用とは認められず、100個の貨物でも個人的使用を証明できれば輸入禁止の対象外です.

 

非侵害品でも通関できない

通関できない多くの理由が商標権や著作権などの知的財産権の侵害です.

税関では輸入申告された貨物や国際郵便物が知的財産権の侵害に該当しないかを検査しています.

しかしながら全ての貨物や郵便物を検査することは物理的に不可能です.

知的財産権の侵害に該当するような貨物や郵便物であっても通関できてしまう場合があります.

輸入通関できたからと言って知的財産権の侵害に該当しない正規品を保証するものではありません.

 

逆に輸入通関できなかったからと言って正規品であることを否定するものでもありません.

税関検査で知的財産権の侵害に該当する恐れがある場合は輸入者に対して認定手続開始通知書を送付します.

 

認定手続きは輸入しようとする貨物や郵便物が知的財産権の侵害か否かを判断するための手続きです.

認定手続開始通知書が届いたからと言って輸入しようとする貨物や郵便物が模倣品であると決まったわけではありません.

認定手続きにおいて輸入者が適切な意見を述べ、そして証拠を提出することにより、輸入しようとする貨物や郵便物が知的財産権の侵害に該当しないということを証明することができるのです.

 

通関を放棄

多くの輸入者は認定手続きにおいて意見を主張したり証拠を提出することをしていません.

適切な意見を主張し証拠を提出すれば輸入通関できるような貨物や郵便物が知的財産権の侵害と見做されているわけです.

輸入通関できなかったからと言って知的財産権の侵害に該当するとは限らないのです.

 

       

著作物の個人輸入

日本で作成すれば著作権の侵害となるようなコンテンツでも、中国などの海外で作成した場合は、その国においては著作権の侵害にならないケースがあります.

その一方で、たとえ海外で合法的に作成されたコンテンツであっても、それを日本へ輸入すると著作権の侵害になる場合もあります.

 

著作権法上、日本への輸入が禁止されている輸入は以下のような輸入です.

 

日本で頒布する目的の輸入であり、そして、仮に日本で作成したら日本の著作権を侵害する方法で海外で作成した物の輸入です(著作権法113条1項1号).

 

「日本で頒布する目的」なので、個人で使用するような場合は対象外です.

「日本で作成したら日本の著作権を侵害する方法で海外で作成した物」が対象なので、海外で著作権を侵害するかどうかは関係ありません.

自分自身や家族で使用するために複製したコンテンツの輸入は、私的複製として日本では著作権の効力が及ばないなので、対象外です.

 

路上で売っている海賊版は、「日本で作成したら日本の著作権を侵害する方法で海外で作成した物」に当たります.

もっとも個人で試聴するためであれば、「日本で頒布する目的」ではないので、対象外ということになります.

 

著作権法のルールによれば、著作権法の効力が及ばない輸入というものを観念することができます.

でもモラルの上では問題です.