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過去に輸入できなかった商品が今回も輸入できないとは限らない

 

過去に税関で差止めされた商品を再び輸入することができるのでしょうか.

同じ商標がついた商品を輸入するのだから、前回と同じ商標権が存在する限り、前回と同様に輸入できないと判断するのが一般的です.

 

しかし税関が輸入を差止めするためには、その都度、認定手続きにおいて、商標権の侵害に該当するか該当しないのかを判断しなければならず、その結果、前回とは異なる判断に至ることもあります.

たとえ同じ商標がついた商品を輸入する場合でも、前回とは違う結果、つまり商標権を侵害しないという結果がでれば、商品を輸入することができます.

 

同じ商標がついた商品に対する侵害の判断が違うとはどういうことなのでしょう.

人が判断するのだから前回の判断が間違えだったということもあります.

それ以外にも、前回の判断とは異なる判断が下される場合があります.

 

商標権の侵害を判断する混同の有無

輸入しようとする商標商品が商標権を侵害するかどうかを判断するための手法が「混同」です.

輸入者の商品に接した消費者が権利者の商品だと誤認するほどに2つの商標が似ていれば、輸入者の商品は商標権の侵害です.

一方、一見すると2つの商標は似ているけど、誤認するほどでなければ、輸入者の商品は商標権の侵害ではありません.

 

2つの商標の見た目などが似ているという形式的な判断に基づいて商標権の侵害を判断するのではなく、誤認するかどうかという実質的な判断に基づいて商標権の侵害を判断します.

 

形式的な判断のみに基づいて商標権の侵害を判断するならば、いつ認定手続きを行っても、侵害という判断が下されます.

似ているという判断が主観とはいえ、認定手続きを行うたびに、似ているという判断が異なるような行政判断が許されるわけがありません.

 

しかし、混同の有無という実質的な判断に基づいて、商標権の侵害を判断するのであれば、認定手続きを行うたびに、侵害の判断が異なることは十分ありえます.

 

商標は生きている

商標権は、権利が生まれたときから常に保護範囲が変化し続けるという動的な性質があります.

商標権が生まれたばかりの頃は誰も知らないような商標でも、商標の使用を続けることにより、5年後、10年後は誰でも知っている著名な商標に生まれ変わることは珍しくありません.

 

誰も知らない無名の商標がついた商品を輸入した5年前と、誰もが知っている著名な商標がついた商品を輸入しようとする現在とでは、権利者の商標と形式的には似ていても、実質的には権利者の商品と輸入者の商品とは混同しない、または混同する、という異なる判断に至ることは当然にあり得ることです.

 

著名になるほど保護範囲が狭くなる

誰も知らない無名な商標権の保護範囲と、誰もが知っている著名な商標権の保護範囲が違うということは理解できると思います.

しかし、著名な商標権の保護範囲が無名な商標権の保護範囲よりも広いとは必ずしも言えないことを理解しておく必要があります.

 

商標が余りに著名になってしまうと、人は商標の細部まで正確に記憶します.

権利者の著名商標を知っている人が、輸入者の商標に接すると、僅かな違いにも気がつくことができます.

一方、権利者の商標が無名であれば、多少の違いがあったとしても、その違いに気が付くことができず、権利者の商標商品と輸入者の商標商品との出所を混同します.

 

過去に輸入できた商標商品であっても輸入できないことある

商標権の保護範囲が常に変化しているので商標権の侵害の判断も流動的です.

その結果、過去に輸入できなかった商標商品であっても輸入できたり、過去に輸入できた商標商品であっても輸入できないということが起こりえるのです.

 

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